読む

今月の3冊

7月前半の暑さが強烈だったので平年並みの暑さがぬるく感じる。先週まではエアコンのない部屋でパソコンの前に座って仕事をしていると室内温度は深夜零時で31度だった。湿度は76パーセント。暑さのせいにするわけではないが、あまり本が読めなかった。困って…

通勤中の読書

通勤時間を利用して何冊か本を読んだ。読み終えたらすぐブログにアップするつもりだったんだけど余裕がなかった。少し暇ができたので本の内容を思い出しながら短く書き留めておく。夜想曲集: 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語 (ハヤカワepi文庫)作者: カズオ…

山口瞳「『男性自身』傑作選・熟年編」

山口瞳「男性自身」傑作選 熟年篇 (新潮文庫)作者: 山口瞳,嵐山光三郎出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2003/03/28メディア: 文庫 クリック: 2回この商品を含むブログ (17件) を見る山口瞳の「『男性自身』傑作選・熟年編」を読んでいたら寺山修司の名前が出…

「第七官界彷徨」尾崎翠

第七官界彷徨 (河出文庫)作者: 尾崎翠出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2009/07/03メディア: 文庫購入: 13人 クリック: 74回この商品を含むブログ (60件) を見る震災後、最初に手にした本がこれ。前から読もう読もうと思いながら積読状態だった。重苦し…

勤勉な2月

行き帰りの長距離バスの中、仕事が始まる前のコーヒーショップ、昼食後の会社のテラス、帰宅前に立ち寄る東京駅地下の喫茶店で本を読み続ける。 2月は「日本辺境論」内田樹、「高峰秀子の捨てられない荷物」斉藤明美、「通勤電車でよむ詩集」小池昌代編著、…

「反時代的、反教養的、反抒情的」古山高麗夫

1月下旬から東京通勤をしていて、その長い通勤時間を利用して本を読んでいる。手当たり次第に読み飛ばしているせいで、本の内容をどんどん忘れてしまう。年頭の誓いとして今年は読書ノートを作ろうなどと思っていのだが、とうてい実現しそうもない。 この本…

「昔日の客」 関口良雄

昔日の客作者: 関口良雄出版社/メーカー: 夏葉社発売日: 2010/10メディア: 単行本購入: 10人 クリック: 143回この商品を含むブログ (55件) を見る名著の復刊ということで、この本についてはすでにあちこちで紹介されているので、まあ、私がここでくどくど宣…

はるき悦巳短編全集

たまたま「力道山がやって来た」を読んで面白かったので、「はるき悦巳短編全集」を購入して読んでみた。この中ではデビュー作の「政・トラぶっとん音頭」がよかった。また、「西の幸福」もほのぼのしている。「エンゼル」の不良の存在感も捨てがたい。 じつ…

「史記を語る」宮崎市定

史記を語る (岩波文庫)作者: 宮崎市定出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1996/04/16メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 13回この商品を含むブログ (22件) を見るいつも興味の赴くままに「列伝」などを読み散らかしているのだが、たまに専門家の解説本を読む…

「中島敦の遍歴」勝又浩

中島敦の遍歴作者: 勝又浩出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2004/10/15メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見るふだん文学評論の類は読まないんだけど、今回は敬愛する中島敦についての評論なのでざっと目を通してみた。意外と言っては失礼だが…

「釣れんボーイ」いましろたかし

癖になる。いましろたかしの漫画は二度読みしてしまう。「釣れんボーイ」は売れない漫画家の釣り道楽の日々を描いたものなんだけど、釣りの合間に描かれている日常がなんともいじましくていい(私は釣り趣味がないので釣りのシーンは退屈だったけど)。 それ…

「辻征夫詩集」

咲いていなさい桃の花! 思潮社の現代詩文庫「辻征夫詩集」を読んでいたら、上の一行が目にとまった。「桃の花」という詩の中の一行なのだが、ここには山之口獏とその娘のミミコさんの名前も登場する。なんだか、とても微笑ましく愛らしい詩なのである。 も…

「我が感傷的アンソロジイ」天野忠

天野忠の詩人論というよりも、有名無名の詩人たちとの交友録と言ったほうがいい。ある日の夕暮れ、京都のバス通りを歩いていると「今お帰りですか」と知人に呼びとめられる。そんななんでもない書き出しから詩人が紹介されていく。 ちなみに、天野忠は古本屋…

「映画千夜一夜」(後半)

全12回の座談会は「映画の中の悪役・悪女」や「異常心理映画」や「銀幕の美女」など、それぞれテーマが決められているのだが、第7回の「映画の中の雨と風」が面白かった。「雨も風もそれ自体はキャメラにうつりにくいものなのに、これほど映画的なイメージを…

「映画千夜一夜」(前半)

映画千夜一夜〈上〉 (中公文庫)作者: 淀川長治,山田宏一,蓮實重彦出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2000/01/25メディア: 文庫 クリック: 13回この商品を含むブログ (21件) を見る最近、観たい映画がない。レンタルショップに行ってもまったく食指が動か…

中井英夫「悪夢の骨牌」

中井英夫の小説「虚無への供物」、「とらんぷ譚」I 、II、 IIIが講談社文庫から新装版として刊行されている。怪奇、幻想、非現実の世界、人外という異境を彷徨う人々を扱った小説である。夢と現実、過去と現在、異質の時空間が綯い交ぜになった世界が展開す…

高峰秀子

高峰秀子作者: 斎藤明美出版社/メーカー: キネマ旬報社発売日: 2010/03/08メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 1人 クリック: 119回この商品を含むブログ (15件) を見るやっぱり買ってしまった。キネマ旬報社の新刊「高峰秀子」。内容は、過去の記事や対…

辰巳ヨシヒロ「劇画漂流」 

1950年代の大阪で、漫画出版の業界にこんな動きがあったなんて知らなかった。漫画といえば手塚治虫、そして石森章太郎・藤子不二雄・赤塚不二夫などの東京のトキワ荘組しか知らなかったので、関西の業界事情は興味深かった。 この本はいちおう辰巳ヨシヒロの…

尾崎一雄「まぼろしの記」

これを読むのは4回目。どういうわけか、私はこういう身辺雑記のような私小説が好きで、古本屋で見つけるたびに落穂拾いのように買い集めている。尾崎一雄、上林暁、耕治人、木山捷平、小山清など、その単行本や文庫本が書店の棚にあれば、黙って見過ごすこと…

武田花「犬の足あと 猫のひげ」

犬の足あと猫のひげ (中公文庫)作者: 武田花出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2010/02/01メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 18回この商品を含むブログ (6件) を見る複数の単行本から写真と文章を抜粋して、一冊の文庫本にまとめたフォトエッセイ集。 …

風邪でダウン

月曜日、やや寒気を感じる。 火曜日、喉がいがらっぽい。鼻水が出る。 水曜日、さらに鼻水が出る。 木曜日、発熱(37.6度)。 以上の段取りで風邪が進行した。発熱に至って、ようやく重い腰を上げ、病院へ行く。 医師は、問診、首のリンパの触診、喉の腫れ具…

除籍本のリサイクル

今年も地元図書館の除籍本リサイクルに行って数冊もらってきた(2月11日)。午後2時頃のんびり出かけたら会場は閑散としていた。午前中はすごく混雑していたらしい。おかげで探しやすかったけど、めぼしい本はすでになくなっていた。 以下、収穫リスト。 「…

つげ義春の自伝

「つげ義春コレクション 苦節十年記/旅籠の思い出」 (ちくま文庫) を読了。本書に収録されている「旅のエッセイ」と「夢日記」はすでに新潮文庫で読んでいる。「自伝的エッセイ」の章は初めてで、これが面白かった。 貧乏と心の病いのオンパレードなのだが、…

金田夫人の鼻・続

金田夫人の鼻に対する攻撃はまだ止まない。いくつか引用してみる。 「夫を剋する顔だ」と主人はなお口惜しそうである。 「十九世紀で売れ残って、二十世紀で店晒しに逢うという相だ」と迷亭は妙なことばかり云う。 (中略) 主人が「おい君、僕はさっきから…

金田夫人の鼻

新年早々、鼻である。誰の鼻かと言えば、「吾輩は猫である」において圧倒的な存在感を示す金田夫人の偉大なる鼻である。 さっそく、その登場場面から引用する。 主人のうちへ女客は稀有だなと見ていると、かの鋭い声の所有者は縮緬の二枚重ねを畳へ擦り付け…

中島義道「哲学の教科書」3

第四章「哲学は何の役にたつのか」で、「自分自身に『なる』こと」を説いている。人生の目標は自分自身「である」ことではなく、自分自身に「なる」こと。「いかに生きる」かではなく、「生きることそのこととは何か」という問いから出発するのだという。 偉…

中島義道「哲学の教科書」2

昨日の続き。 現実世界が十分にグロテスクなのに、なにもわざわざグロテスクな虚構を構築することはあるまいという趣旨であった。では、中島が好ましく思っているのは何か? マチスの上品な室内、ボナールの暖かい光に充たされたテーブルやバルコニー、デュ…

中島義道「哲学の教科書」1

おそらく、第三章の「哲学の問いとはいかなるものか」が哲学の本質的なことだろう。もし私に哲学者としての資質があれば、それらの事柄についてとことん考え抜くのだろうが、幸か不幸かそういう資質がない。よって、いつものごとく気になった箇所だけをピッ…

冬休み

冬休みになったらゆっくり読みたいと思っていた本がある。つい最近、近所の書店で買い込んだ本もある。図書館から借りてきた本もある。さらに昨日、Amazonに注文しておいた本が届いた。机の上に積み上げてみたら14冊。いくらなんでも十日間で読めるわけがな…

北杜夫「母の影」

高校生の頃「どくとるマンボウ」シリーズを愛読したものだが、その後、ずいぶんご無沙汰してしまった。たしか、「楡家の人びと」の下巻の途中で挫折したのだ。冒頭から登場人物が生き生きと描かれている箇所は楽しかったのだが、戦時の記録が長々と続く記述…