「映画千夜一夜」(後半)

映画千夜一夜〈下〉 (中公文庫)
全12回の座談会は「映画の中の悪役・悪女」や「異常心理映画」や「銀幕の美女」など、それぞれテーマが決められているのだが、第7回の「映画の中の雨と風」が面白かった。「雨も風もそれ自体はキャメラにうつりにくいものなのに、これほど映画的なイメージをよびおこすものはない」という。

  • ジャンヌ・モローがパリの夜の街をさまよい歩く『死刑台のエレベータ』でも雨が降っている。
  • モンタ・ベルの『美人帝国』で、旅芸人が汽車に乗っていくところでも雨になり、汽車の窓に水滴が流れていく。汽車の窓の雨。
  • 『暗黒街の弾痕』では現金輸送車を待ち構えている強盗たちの自動車に雨がずっと当たっている。車窓に雨が滝のように流れている。
  • インドの雨でいえば『黒水仙』。シスターが人間的に負けて去っていくところで、蓮池にザーッと風が吹いて、蓮の葉がみんなめくれて雨になっていく。
  • 黒澤明の『羅生門』の雨がすごい。鬼瓦にあたる雨、瓦を流れる雨、石段に水しぶきが立っている雨。そして『七人の侍』の戦闘シーンも、どしゃ降りの雨。

では、先週の続き。