「映画千夜一夜」(後半)
全12回の座談会は「映画の中の悪役・悪女」や「異常心理映画」や「銀幕の美女」など、それぞれテーマが決められているのだが、第7回の「映画の中の雨と風」が面白かった。「雨も風もそれ自体はキャメラにうつりにくいものなのに、これほど映画的なイメージをよびおこすものはない」という。
- ジャンヌ・モローがパリの夜の街をさまよい歩く『死刑台のエレベータ』でも雨が降っている。
- モンタ・ベルの『美人帝国』で、旅芸人が汽車に乗っていくところでも雨になり、汽車の窓に水滴が流れていく。汽車の窓の雨。
- 『暗黒街の弾痕』では現金輸送車を待ち構えている強盗たちの自動車に雨がずっと当たっている。車窓に雨が滝のように流れている。
- インドの雨でいえば『黒水仙』。シスターが人間的に負けて去っていくところで、蓮池にザーッと風が吹いて、蓮の葉がみんなめくれて雨になっていく。
- 黒澤明の『羅生門』の雨がすごい。鬼瓦にあたる雨、瓦を流れる雨、石段に水しぶきが立っている雨。そして『七人の侍』の戦闘シーンも、どしゃ降りの雨。
では、先週の続き。
- 「東への道」 (D・W・グリフィス、1920、米)
- 「M」 (フリッツ・ラング、1931、独)
- 「吸血鬼」 (カール・ドライヤー、1932、独・仏)
- 「天一坊と伊賀亮」 (衣笠貞之助、1933、日)
- 「限りなき前進」 (内田吐夢、1937、日)
- 「西部の男」 (ウィリアム・ワイラー、1940、米)
- 「毒薬と老嬢」 (フランク・キャプラ、1944、米)
- 「にがい米」 (ジョゼッペ・デ・サンティス、1949、伊)
- 「夏の嵐」 (ルキノ・ヴィスコンティ、1953、伊)
- 「嵐が丘」 (ルイス・ブニュエル、1953、メキシコ)
- 「捜索者」 (ジョン・フォード、1956、米)
- 「白夜」 (ルキノ・ヴィスコンティ、1957、伊)
- 「殺し屋ネルソン」 (ドン・シーゲル、1957、米)
- 「くたばれ! ヤンキース」(ジョージ・アボット+スタンリー・ドーネン、1958、米)
- 「召使」 (ジョゼフ・ロージー、1963、英)
- 「妖婆 死棺の呪い」(コンスタンティン・エルショフ+ゲオルギー・クロバチョフ、1967、露)
- 「ギャンブラー」 (ロバート・アルトマン、1971、米)
- 「蛍川」 (須川栄三、1986、日)
- 「マックス・モン・アムール」 (大島渚、1986、仏)