読む

池波正太郎の真田本

正月にNHKラジオで池波正太郎の「信濃大名記」と「錯乱」(橋爪功・朗読)を聞き、これが予想外に面白かった。さっそく新潮文庫「真田騒動」を買ってきて活字で読んだが、やっぱり面白い。 一般的に真田といえば幸村なんだけど、こちらは幸村の兄の信幸に焦…

3冊

東京通勤が断続的に続いている。行き帰りの高速バスの中が唯一の読書空間。慢性的に睡眠不足なので読書スピードがいつも以上に遅くなる。 「荘子物語」 諸橋轍次 これは期待外れ。著者は孔子の儒教に肩入れしている人か? 荘子に対していちいち批判的である…

「精神のけもの道」春日武彦/吉野朔実

精神のけもの道 (アスペクト文庫)作者: 春日武彦,吉野朔実出版社/メーカー: アスペクト発売日: 2012/06/01メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 2回この商品を含むブログ (1件) を見る以前読んだ「私はなぜ狂わずにいるのか」(春日武彦)は精神病院に入院して…

織田作之助「木の都」と「蛍」

織田作之助 (ちくま日本文学 35)作者: 織田作之助出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2009/05/11メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 8回この商品を含むブログ (5件) を見る久しぶりに織田作之助の「木の都」と「蛍」を再読した。 「木の都」は織田作之助が懐…

犀の角のようにただ独り歩め

柔らかな犀の角 (文春文庫)作者: 山崎努出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2014/11/07メディア: 文庫この商品を含むブログ (4件) を見る毎晩、夕食後に自室で寝転がって読んだ。満腹状態なのですぐに睡魔が襲ってくる。そんなときは眠気に抵抗せずうとうと眠…

「名文を書かない文章講座」村田喜代子

名文を書かない文章講座 (朝日文庫)作者: 村田喜代子出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2008/09/05メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 10回この商品を含むブログ (12件) を見るとても読みやすい。初心者向けの丁寧な文章指導書である。エッセイの書き方…

年末年始の読書計画

遅くなったけど年末年始に読む本を選抜した。 1 「エセー 3」 モンテーニュ 2 「怖い絵 死と乙女篇」 中野京子 3 「みなかみ紀行」 若山牧水 4 「武蔵野」 国木田独歩 5 「名文を書かない文章講座」 村田喜代子 6 「神の子どもたちはみな踊る」 村上…

「マンガホニャララ」ブルボン小林

この著者は私よりも一回り年下なんだけど、読んでいる途中から文化系サークルの先輩のように思えてきて、すっかり教えを受ける姿勢になってしまった。 最近、マンガ喫茶に行ってないが、いつか読んでやろうと思って気になるマンガのタイトルをメモしておいた…

体をケアするための二冊

咳喘息、五十肩、飛蚊症と光視症。今年はさまざまな体の不調に見舞われた。生きるの死ぬのというようなシリアスな病気ではないが、二つも三つも重なるとさすがに気が重くなる。せっかくなので、これを機に体をきちんとケアしようと思う。 行動に移る前に、と…

「くすぶり」

「くすぶり」という言葉がある。 かつて大阪では、真剣師のことをそう呼んでいた。火種は持っているが、メラメラと燃え上がることはなく、煙だけ出してくすぶっている将棋指し――ということだから、どちらかといえば、プロでも純粋なアマチュアでもない真剣師…

2冊

ねにもつタイプ (ちくま文庫)作者: 岸本佐知子出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2010/01/06メディア: 文庫購入: 7人 クリック: 209回この商品を含むブログ (58件) を見る 「ねにもつタイプ」 岸本佐知子 面白い才能だな。人間は妄想を野放しにしていると、…

一般人名語録

一般人名語録 (講談社文庫)作者: 永六輔出版社/メーカー: 講談社発売日: 1993/11メディア: 文庫 クリック: 8回この商品を含むブログ (2件) を見る 「一般人名語録」 永六輔 先週にひきつづき、市井の人々の呟きを聞いてみる。 「本音で生きろなんて言うけど…

普通人名語録

普通人名語録 (講談社文庫)作者: 永六輔出版社/メーカー: 講談社発売日: 1991/06メディア: 文庫この商品を含むブログを見る 「普通人名語録」 永六輔 十年以上も前に一度読んで、そのまま本棚の隅に突っ込んでおいた文庫本をぱらぱらめくっみたら、意外にも…

2冊

あまり本を読む気にもならず、2冊だけ通読。 「人間・この劇的なるもの」 福田恒存 「100分de名著 パスカル パンセ」 鹿島茂 人間・この劇的なるもの (新潮文庫)作者: 福田恆存出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1960/08/22メディア: 文庫購入: 6人 クリック: …

酒を飲めば死ぬ。飲まなくとも死ぬ。

仕事が停滞しているので雑文ばかり読みちらす。酒にまじわれば (文春文庫)作者: なぎら健壱出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2010/12/03メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 11回この商品を含むブログ (14件) を見る 「酒にまじわれば」 なぎら健壱 飲酒にま…

年初の読書

新装版 俄(上) 浪華遊侠伝 (講談社文庫)作者: 司馬遼太郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/06/15メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 16回この商品を含むブログ (4件) を見る「俄」司馬遼太郎 「わが一生は、一場の俄のようなものだ」 人生をたった一回の…

「鹿行の昭和」刊行

旧鹿島郡と旧行方郡の写真集が刊行されたのでご紹介。 時代を昭和に限定した茨城県南部地域の生活記録という趣の本である。特徴としては一般の人が私蔵していた写真をメインに構成しているので、当時の人々の暮らしぶりが身近な距離感で切り取られている。 …

「悪霊」読了

ドストエフスキーの「悪霊」上下巻合わせて1,350ページ。どうやらこうやら2週間かけて読み終えた。 スタヴローギンの母・ワルワーラ夫人とその家の食客・ステパン氏がこの物語の大半を占めるのだが、事件とはほとんど関係ない。どうでもいいような二人の件が…

長編に挑戦

読書の秋だからというわけではないが、長編小説ばかり読んでいる。山本周五郎の「ながい坂」、ディック・フランシスの「混戦」と「密輸」。それぞれ面白く読んだ。 長編なので1週間くらいかけて読んだのだが、その間、物語の中の時間を登場人物たちと共に過…

「カフカとの対話」グスタフ・ヤノーホ

1920年3月、正午少し前の時間、17歳の少年がプラハ市内の労働災害保険局の古めかしい建物に入っていく。同局に勤める父親の紹介で、三階の法規課にいる人を訪ねることになる。 「事務室はかなり広く、設備が行きとどいていた。二つ並べてある事務机の一方に…

森銑三「物いふ小箱」

朝日新聞に掲載された南伸坊の推薦文を読んでからずっと気になっていた。運よく除籍本の中からピックアップできたので、さっそく読んでみた。 全体的に話があっさりしている。いわゆる怪奇談特有の濃厚な雰囲気には乏しいようだ。どの話も短いので、寝床に持…

「兄・吉行淳之介と私」吉行和子

平成六年の七月に吉行淳之介は亡くなるのだが、その葬式のときに母親(あぐり)がお棺の中の淳之介に小さな声で何事か話しかけている。「それで、あのことだけどね」と言っている。お客が来たので和子が母をどけても、その場所が空くと、また側に行って話の…

9月、5冊

丸山健二の「月に泣く」、「惑星の泉」、「野に降る星」、吉行淳之介の「焔の中」、門脇健の「哲学入門 死ぬのは僕らだ!」。 読書欲が高まっているのか、一気にガツガツ読んだ。どれも面白い。丸山と吉行の本は再読・三読で、内容は分かっているのに面白く…

「SNOOPY のもっと気楽に 1(なるようになるさ)」

それほど期待してなかったのに読んでみると意外に面白かった。スヌーピーやチャーリー・ブラウンたちが登場する「ピーナッツ」って、子供向けのマンガ、ドジでかわいいだけの世界だと思っていた。でも、実際に読んでみるとそれだけではない。もっと懐が深い…

久世光彦「ベスト・オブ・マイ・ラスト・ソング」

ここで紹介されている歌のほとんどは戦前・戦中・戦後直後の歌ばかりなので、当然、リアルタイムで聴いたわけではない。でも、歌詞を見ながら口ずさむことはできる。体験したわけでもないのに、歌の調べに乗せられて戦後直後の焼け跡の町で生きてきたような…

宮本輝「二十歳の火影」

二十代の頃に読んで、これはいい文章だと思い、身近な本棚に並べておいた。それなのに再読したのが30年後とは・・・。歳月が過ぎてゆくことのなんと慌ただしいことか。 再読した印象は30年前とほとんど変わらない。ほんの数ページのエッセイなのに、一つひと…

無名の人々の人生

10年以上も前に古本屋で買った本を今頃読んでいる。なんとなく憂鬱な気分に逆らわずに手に取った本だけど、2冊とも面白く読んだ。 森田誠吾 「魚河岸ものがたり」 隅田川河口のまちに住む人々、その暮らしぶり、日々の哀歓が描き出されている。一昔前のおじ…

上原隆「雨の日と月曜日は」

以前、この著者の「友がみな我よりえらく見える日は」を読んだことがある。その中に収録されていた「芥川賞作家」という短文を読んでちょっと驚いた。 「オキナワの少年」で芥川賞を受賞した東峰夫のその後の人生が取材されている。東は故郷を捨て、月給生活…

引き続き、小山清

「朴歯の下駄」の余韻に浸りながら、ちくま文庫の「落穂拾い・犬の生活」と津軽書房の「風貌」を読んだ。落穂拾い・犬の生活 (ちくま文庫)作者: 小山清出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2013/03/01メディア: 文庫 クリック: 12回この商品を含むブログ (18件…

小山清「朴歯の下駄」

先週に引き続き、図書館でポプラ社の百年文庫の一冊「里」を借りてきて「朴歯の下駄」を読んだ。昔、新潮文庫版で読んでいるはずなんだけど内容をすっかり忘れている。 でも、再読してよかった。小山清の小説はしばらくご無沙汰していたので、久しぶりにしみ…