無名の人々の人生

ニューヨーク・スケッチブック (河出文庫)
魚河岸ものがたり (新潮文庫)
10年以上も前に古本屋で買った本を今頃読んでいる。なんとなく憂鬱な気分に逆らわずに手に取った本だけど、2冊とも面白く読んだ。

隅田川河口のまちに住む人々、その暮らしぶり、日々の哀歓が描き出されている。一昔前のおじいさんたちの世代の語り口が懐かしい。四章の「波除神社」、博打好きな寿司屋の主人が語る不運な半生記がよかった。

  • Pete Hamill “A New York Skechbook”

なんでもない日常風景、平凡な男と女の出会いと別れ、見慣れた日々の暮らしがこともなく過ぎてゆく。そんな中に突然、死が現れる。すると、さっきまで平凡に見えていた日常が俄然、ドラマチックな様相を帯びてくる。
こういう短い文章で人生の断片を感動的に描くには、おそらくエンディングを用意してから導入部を作り込んでいくんだろうな、と手法に興味を持ってしまった。そんな読み方でも泣ける場面ではしっかり泣けるんだから文句はない。