2冊
あまり本を読む気にもならず、2冊だけ通読。
- 作者: 福田恆存
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1960/08/22
- メディア: 文庫
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オセロ―は劇の最後においてはじめて「自分自身をだます」のではない。かれは、最初から、自分をだましている。なにもイアゴーの手を借りる必要はなかった。かれは嫉妬がしたかったのだ。激しい情熱のとりこになり、それを味わいたかった。「愛することを知らずして愛しすぎた男の身の上」を演じたかった。ただそれだけのことだ。(中略)
愚昧といえば、シェイクスピア劇の主人公たちが不幸に導入される過程は、すべて愚かしい。が、リア王は愛する娘に欺かれる老父の悲哀と憎しみを、マクベスは野心家の不安と恐怖を、ハムレットは志を得ざる王子の憤りと狂気を演じたかったまでである。かれらはいずれも最初に意識して自分の役割を選ぶ。
こういう文章を読むと胸がときめく。分析の鋭さだけではない。語調というか、文章のリズムが心地いい。