酒を飲めば死ぬ。飲まなくとも死ぬ。

仕事が停滞しているので雑文ばかり読みちらす。

酒にまじわれば (文春文庫)

酒にまじわれば (文春文庫)

飲酒にまつわるエピソード集である。
いい言葉を教わった。「飲めば死ぬ。飲まなくとも死ぬ」
昔、東中野の居酒屋の板壁に大書されていた言葉を思い出した。

酒は人類の敵である
しかし飲むべきである
聖書曰く、汝の敵を愛せよ

アルバイト先へ向かう途中たまたま目にした言葉なんだけど、これは居酒屋の親父のオリジナルだろうか。それとも酒飲みたちの間で昔から流布している言葉なのだろうか。

間抜けの構造 (新潮新書)

間抜けの構造 (新潮新書)

この本に限らず、最近の新書はずいぶん安っぽい作りになった。この本もおそらく、たけしが勝手に2時間くらいしゃべって、それをアシスタントが録音してワープロ入力し、編集者が校正して一丁あがりって感じだろう。
この本に書いてあることはほとんどどこかで読んだり聞いたりしたことばかり。特に目新しいことはないのだが、それでもたけしの芸談は面白い。たとえばスリムクラブの漫才についてこんなことを言っている。

この前見て笑っちゃたけど、“間”をたっぷりとる。最近では珍しいタイプで確信犯だね。(文章で表現すると、「・・・」ばかり)
“間”を埋めないで、その「行間」で笑いをとろうとするこのタイプが、今の客には新鮮に映るんだろう。これだけ「速い漫才」全盛の時代にあって、あれだけ“間”を取って漫才するのは勇気がいる。
でも、あいつらが遅いからといって、“間”が悪いかといったらそうじゃない。テンポはゆっくりだけど、音楽の裏打ちのような独特の心地よさがある。
それに、このスタイルはあいつらが発明したかというと、そうじゃない。実はスタイルとしては古典的で、どちらかというと、ヨーロッパのコントに近い。
(中略)
ただ、いかんせん、トップに立つのは難しい。投手で言えば、あくまでもナックルボーラ―的な存在なんだよね。

特にどうってことないエッセイ集なんだけど、春樹ファンにとってはこういう肩の凝らないおしゃべりも楽しい。

  • 「怪奇幻想ミステリーはお好き?」 風間賢二

怪奇幻想ミステリー小説について、その歴史、特徴、全体像を簡単にお勉強させてもらった。人間は現実だけでは物足りなくて、恐怖や不快な妄想や謎などの虚構を愛する変な生きものだ。

ただお話としてのおもしろさを純粋に味わってほしい。アラビアンナイトは「人間はかくあるべきだ」とか、「世の中はこうあるべきだ」といったことを言わないところに真骨頂がある。

イスラーム文明が到達したより普遍的な精神についても言及している。

中世のイスラーム圏では多民族、多宗教がうまく共生できていた。それは彼らの統治の方法にすぐれたところがあったからだ。(中略)
彼らが新しい土地を征服する際、相手に改宗を強制せず、税金を払うことによって信教の自由を保証したり、ときにより自治を与えたりしてゆるやかに連合する方針をとったからだ。(中略)イスラームグローバリズムはある意味で淡泊な側面を持っていて、そのような味わいも、アラビアンナイトの底流にそこはなかとなく流れているようだ。