「名文を書かない文章講座」村田喜代子
- 作者: 村田喜代子
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2008/09/05
- メディア: 文庫
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地の文、セリフ、描写などテクニカルな指導だけではない。何をどう書くか、その心構えについても言及している。
善行は徳で、母の愛は尊く、そして幼い子供は天使、というような単一な視点を持ってはいないか。善行は不徳に対する慰安で、母の愛はエゴで、子供は意識のない悪魔という背理の見方もある。それを知るのと知らないのとでは、同じことを書いても違ってくる。書くことは認識行為で、朗らかな歌をうたうようなものではないのだ。
思わず、背筋が伸びる。安易にエッセイでも書いてみようかなどと浮かれていた気分が一気に冷めてしまうが、わるい気分ではない。この緊張感は心地いい。
たぶん、一番の難関は継続できるかどうかだと思う。いい本に巡り会って一時的に熱くなり書き始めるのだが、続かないのだ。そうして、いつか書くぞと思いつつ、日々はだらだらと過ぎていく。どんぶらこ。