小山清「朴歯の下駄」

先週に引き続き、図書館でポプラ社の百年文庫の一冊「里」を借りてきて「朴歯の下駄」を読んだ。昔、新潮文庫版で読んでいるはずなんだけど内容をすっかり忘れている。
でも、再読してよかった。小山清の小説はしばらくご無沙汰していたので、久しぶりにしみじみ文章を味わうことができた。これもまた生きる歓びのひとつだな。
「朴歯の下駄」では、廓の女との交情が淡くスケッチされている。不思議なことに、吉原の遊女との交流なんだけど、読んでいると何故か十代のうぶな初恋のような印象を受ける。でも、これが小山清なんだ、とも思う。小山の小説から受ける印象は初々しさである。純朴で正直、善良さが光っているのである。読後に爽やかな甘い哀しみが心に残るのは、そのせいだ。

(019)里 (百年文庫)

(019)里 (百年文庫)