風邪でダウン

深夜の雪

月曜日、やや寒気を感じる。
火曜日、喉がいがらっぽい。鼻水が出る。
水曜日、さらに鼻水が出る。
木曜日、発熱(37.6度)。
以上の段取りで風邪が進行した。発熱に至って、ようやく重い腰を上げ、病院へ行く。
医師は、問診、首のリンパの触診、喉の腫れ具合を確認すると、一言。「じつに解りやすいですね」 五種類の薬を渡されて帰宅。薬を飲むとその夜のうちに熱は下がった。ただ、体のだるさはまだ続いている。
ちなみに、我が座右の書「当世病気道楽」別役実・著には、風邪について次のように書かれている。

一般に「風邪」というと、病気とも思えないような病気と看做されがちであるが、実はそうではない。この奥行きは意外と深く、しかも侮り難い趣があり、「楽しむための病気」という意味では、「風邪」にはじまって「風邪」に終わるとまで、言われているものなのである。
当然ここでは、初心者としての「風邪の楽しみ方」を問題にするのであるが、同時にそれは、熟達者としての過程に、そのまま連続するものと言われている。従って「楽しむための病気」を「風邪」で開始した人間は、それに固執し、専心し、いわゆる「風邪道楽」となる場合が多い。
つまり一般的には、「水虫」から「癌」に至る過程の病気における諸段階の中に、初心者から熟達者へのコースが、細かく選びわけられているのであるが、「風邪」の場合は、それ自体がひとつのコースとなり得ている、というわけである。その症状が、万病に比して極めてバラエティーに富んでいることもさることながら、にもかかわらずそれが単なる「風邪」であるという点に、玄人受けのする何ものかがあるのであろう。

このように解説されると、もう少し風邪を長引かせてみようという気になるではないか。どのように風邪の症状が千変万化するものか、その様子を見てみたい、と。
とりわけ、「風邪の場合は、それ自体がひとつのコースとなり得ている」という指摘には、芸術家が先人の模倣を脱し、オリジナリティを確立し、自らがひとつのジャンルになろとする志の高さを感じるではないか。
(写真は、我が家の庭に降る雪。撮影は深夜、日時は忘れた)