「反時代的、反教養的、反抒情的」古山高麗夫

1月下旬から東京通勤をしていて、その長い通勤時間を利用して本を読んでいる。手当たり次第に読み飛ばしているせいで、本の内容をどんどん忘れてしまう。年頭の誓いとして今年は読書ノートを作ろうなどと思っていのだが、とうてい実現しそうもない。
この本は地元の古本屋で100円均一の棚にあったので拾っておいた。いろいろな新聞や雑誌に掲載された文章の寄せ集めなので全体的に統一感はなく、内容もどうということはない。同じような文章の重複もあり、意地悪な言い方をすれば、老いの繰り言に思える部分も多い。
それでも古山高麗夫は好きな作家なので、懐かしい叔父さんの昔話を聞くようなつもりでぱらぱらページをめくり、あっという間に読み終えてしまった。

私は、戦争でもまれたせいか、人は運次第だという考え方をする。戦争で死ぬのも、負傷するのも、それを免れるのも、運だと思っている。
(中略)
運は自らきりひらいて手に入れるものだ、などという言葉を聞いたり、そういった文章を読んだりすると、努力で手に入るようなものは、運ではないんだ、と思ってしまう。
天は自ら助くる者を助く、という西諺を、私たちはよく聞かされたものだが、天は自ら助くる者も助けない者も、助け、かつ殺す。
運だの天だのというのは、努力だの誠意だのに応えてくれるようなものではない。人の手に負えるようなものではない。私は白旗を掲げている。

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カフカの父親 (文学の冒険シリーズ)
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