久しぶりに太宰を読む
- 作者: 太宰治
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2004/02
- メディア: 文庫
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巻末の解説で奥野健男が指摘しているように「右大臣実朝」の実朝は「駆込み訴え」のキリストである。俗物たちの中にあって、ひとり心清らかで美しい人なのである。そして自分を裏切り、殺すであろう人たちを静かな憐れみの眼で眺めている。太宰にとっては理想像なのだろう。薄汚れた自分を省みながらも一条の光として、そのような人物を描き続けたのだろう。
「惜別」は若き日の魯迅の姿であるが、これもまた太宰の思い入れが強いので、どこまで魯迅の実像に迫っているのかわからない。でも、聡明で熱い心を持った魯迅青年の悩める姿はとても好ましく、こちらも読後感はよかった。
魯迅の「藤野先生」が読みたくなった。