古書店グラフィティを2冊

先週、出久根達郎のエッセイを読んだせいで、今週も古本関連の本に手を出した。池谷伊佐夫の「神保町の蟲」と「三都古書店グラフィティ」。相変わらず、この人の店内見取図は細かい部分までよく目が行き届いている。四方の棚にどんな本が並んでいるのか端から端まで順番に眺めていると、つい自分がその棚の前に立っているような気がしてくる。値段を睨んで買おうがどうしようか迷ったりしている。おかげで読むスピードがやけに遅くなってしまった。
10年前、関東の田舎町に引っ越して以来、ほとんど古本屋通いをしなくなった。周囲に古本屋など一軒もないのだ。利根川を越えて千葉県側に行くとブックオフが一軒ある。それだけである。ふだん東京がうらやましいと思うことはないのだけれど、古本屋と喫茶店が充実していることだけは別だ。つくづくうらやましい。

三都古書店グラフィティ

三都古書店グラフィティ

この二冊は、古本の紹介だけでなく、店の主のプロフィールなども簡単に紹介している。個性的なご主人たちの何気ない一言がイラストともにぽつりと添えられたりしている。万引きについては、それを見逃すという人もいれば、悔しくて夜も眠れないという人もいる。嫌いな作家の本は店に置かないという人もいる。ちなみに、その作家とは大江健三郎野間宏なのだが、かれらの本を偶然手に入れてしまった場合には即座に捨てるという(それもひとつの見識だと思うが、なかなか手厳しい)。ひやかし客はお断りという人もいれば、遠慮してすぐに出ていく客にもっとゆっくりしていきなさいという人もいる。まあ、千差万別である。
ちなみに、「神保町の蟲」の巻末には『あなたも神保町の古書店主に』という章があり、(2004年現在)神保町に古書店をオープンした場合にどのようなハードルがあるかをシュミレーションしている。もし自分が古書店を開くとしたらどんな店にしようか? いろいろな妄想に耽って時間の経過を忘れてしまった。
神保町の虫―新東京古書店グラフィティ

神保町の虫―新東京古書店グラフィティ