リサイクル本、ふたたび

虫の春秋 (集英社文庫)

虫の春秋 (集英社文庫)

図書館のロビーにはまだ除籍図書が残っている。一人十冊の限定でリサイクルしていたのだが、だれも持って行かない本が取り残されて、段ボール箱に置かれているのだ。
ひょいと見ると、伊藤海彦の「走る歌 江ノ電」(朝日文庫)があった。内田百けんの「東京日記」(岩波文庫)と奥本大三郎の「虫の春秋」もあった。さらに西條八十三好達治編の「世界童謡集」と保田與重郎の「芭蕉」もあった。全部で五冊だが、思わぬ拾い物だった。でも、またこうして本が増えていくのだ。わかっちゃいるけどやめられない。

ちなみに、伊藤海彦の「小径の消息―かまくら自然手帖」(かまくら春秋社)を私は愛蔵している。これは30年前に、東京・神田神保町の書店「書肆(しょし)アクセス」で購入した本だ。大型書店などには置かれることのない地味な本だが、珠玉の名文集である。「書肆アクセス」は地域出版社や小出版社の出版物を専門に扱う貴重な書店だったが、2年前に閉店したというニュースを聞いた。「小径の消息」のような良書を書棚に並べる書店がなくなることは寂しいことだ。