「続・男はつらいよ」
- 出版社/メーカー: 松竹
- 発売日: 2005/07/29
- メディア: DVD
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第二作には喜劇役者・渥美清の見せ場がある。それは、寅さんが瞼の母と再会を果たしたものの冷たくあしらわれ、夜、旅館に戻って坪内先生にそのあらましを打ち明けながら泣くシーンだ。ここで渥美は二度ずっこけてみせる。一度は座椅子を使ってつんのめる。二度目は障子に寄りかかって滑って後ろにひっくり返る。このときは派手に庭先まで転げ落ちてみせる。母の仕打ちに泣いているくせに、庭に転げ落ちた自分を苦笑いでごまかそうとする。泣いているんだけど、可笑しい。笑うしかないんだけど、やっぱり悲しい。悔しさと悲しさ。それでも苦笑いを浮かべるしかない。もう何がなんだかわからなくなって泣きながら笑っている。このときの渥美清はすごい。
生みの母を演じたミヤコ蝶々もいい。貫禄だな。渥美清がミヤコ蝶々の胸を借りて演じているようにさえ見える。
この映画の前半で、寅と再会した坪内先生が漢詩を吟じるシーンがある。杜甫の「贈衞八處士」。
人生相見ざること
ややもすれば参と商のごとし
今夕復た何の夕べか
この灯燭の光を共にす
(後略)「人間というのは再会するのは、はなはだ難しいということだ。今夜はなんと素晴らしい夜であることだ。古い友人が訪ねてきたのである。お父さんの友達が来たというので子供達が質問攻めにする。酒をもってこいと追っ払う。二人は杯を重ねる。・・・(中略)・・・
外は雨がしとしと降っている。二人の話は尽きない。明日になれば君はまた別れを告げて山を越え、私はここに残る。ひとたび別れれば人生は茫々としてお互いの消息は絶えはてる。 ああ、明日山岳を隔つ、世事ふたつながら茫々だな!」
中年を過ぎると、まことに味わい深い詩です。