「続・男はつらいよ」

続・男はつらいよ [DVD]

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この第二作を観るのは3回目。中学時代の恩師・坪内先生を東野英治郎が演じていて、渥美清とのやりとりが観ていて楽しい。そういえば、東野英治郎小津安二郎の「秋刀魚の味」では漢文の先生役だった。どうやら松竹の監督たちは東野英治郎を学生時代の恩師役として登場させたがるようだ。
第二作には喜劇役者・渥美清の見せ場がある。それは、寅さんが瞼の母と再会を果たしたものの冷たくあしらわれ、夜、旅館に戻って坪内先生にそのあらましを打ち明けながら泣くシーンだ。ここで渥美は二度ずっこけてみせる。一度は座椅子を使ってつんのめる。二度目は障子に寄りかかって滑って後ろにひっくり返る。このときは派手に庭先まで転げ落ちてみせる。母の仕打ちに泣いているくせに、庭に転げ落ちた自分を苦笑いでごまかそうとする。泣いているんだけど、可笑しい。笑うしかないんだけど、やっぱり悲しい。悔しさと悲しさ。それでも苦笑いを浮かべるしかない。もう何がなんだかわからなくなって泣きながら笑っている。このときの渥美清はすごい。
生みの母を演じたミヤコ蝶々もいい。貫禄だな。渥美清ミヤコ蝶々の胸を借りて演じているようにさえ見える。
この映画の前半で、寅と再会した坪内先生が漢詩を吟じるシーンがある。杜甫の「贈衞八處士」。

人生相見ざること
ややもすれば参と商のごとし
今夕復た何の夕べか
この灯燭の光を共にす
(後略)

「人間というのは再会するのは、はなはだ難しいということだ。今夜はなんと素晴らしい夜であることだ。古い友人が訪ねてきたのである。お父さんの友達が来たというので子供達が質問攻めにする。酒をもってこいと追っ払う。二人は杯を重ねる。・・・(中略)・・・
外は雨がしとしと降っている。二人の話は尽きない。明日になれば君はまた別れを告げて山を越え、私はここに残る。ひとたび別れれば人生は茫々としてお互いの消息は絶えはてる。 ああ、明日山岳を隔つ、世事ふたつながら茫々だな!」

中年を過ぎると、まことに味わい深い詩です。