春風亭柳昇

陸軍落語兵 (ちくま文庫)
与太郎戦記 (ちくま文庫)
与太郎戦記」と「陸軍落語兵」を読んだ。さすが語りのプロだけあって、ネタの粒を揃えている。また、ネタの良さだけではなく、柳昇の飄々とした語り口もいい。文章にとぼけた味わいがあって読んでいると気持ちも軽くなってくる。
ちなみに、こんな感じ。

ここだけの話だが、戦争は男らしい。大砲や、機関銃を、ドンドン、バリバリと撃って勇ましくてカッコいい。
ただ困るのは、撃っているのは味方だけでなく、敵も撃ってくることだ。どうもこれだけはいけない、弾丸に当たれば痛いのだから・・・。
今度やるなら、全然撃ってこない相手とやりたい。

いちおう書き言葉で語られているが、これはほとんど春風亭柳昇の落語そのものだ。本当は悲惨な戦地報告なのに、この人が語るとなんだかほのぼのとしてしまう。戦争をこんなに楽しく語っていいのだろうか・・・いや、いいのだ。固いことは言わない。ここはぞんぶんに語り芸を楽しもう。

昨日うまれた たこ八が
弾に撃たれて 名誉の戦死
たこの遺骨は いつ帰る
骨がないから 帰れない
たこの母さん 悲しかろ

これは作者不詳の替え歌らしい。「与太郎戦記」の解説に載っていた。なんだか、可笑しいような悲しいような妙な歌詞だ。落語家・柳昇の戦地報告の最後を飾るにふさわしい。