宮沢賢治「よだかの星」

よだかの星 (日本の童話名作選)

よだかの星 (日本の童話名作選)

よだかは、実にみにくい鳥です。
いい書き出しだな。しばらく乾いた小説ばかり読んでいたせいか、最近もう少し情感に訴える物語が読みたくなった。そこで、「よだかの星」。それにしても純度の高い童話だ。よだかの悲しみ、その一点に絞って、余分なものは一切ない。まるで一篇の詩のようだ。散文の冗長さがない。よだかの運命を見守る賢治の眼差しの強さに、何かただごとではないものを感じるのだが、私の思いすごしだろうか。また、賢治が自分自身の運命を重ねているような気がしてくるのは感傷的すぎるだろうか。
宮沢賢治の童話集は岩波文庫と新潮社文庫の二冊持っているのだが、今回は図書館で絵本を借りてきて読んだ。絵は中村道雄。
銀河鉄道の夜―最終形・初期形〈ブルカニロ博士篇〉 (ますむら版宮沢賢治童話集)
ますむらひろしの文庫本も三冊、購入した。

グスコーブドリの伝記」に収録されている「猫の事務所」がよかった。かま猫がせつない。
それにしても宮沢賢治はいったい何を読んで詩や童話を学んだのだろう。賢治の詩や童話には、誰かの作品を模倣した形跡がない。いきなりオリジナルの世界が出現しているのだ。もしかしたら私が勉強不足なだけかもしれない。宮沢賢治についての研究書を読めば、そのあたりの秘密が解き明かされているのかもしれない。でも、やはり天才というのは実在するのだとも思う。