黄色い涙 Part 2

花とビニール傘

今週、急に訪問者が増えた。 どうなってるの? と、アクセス記録を調べてみたら、2005年10月2日の「黄色い涙」のページ「http://d.hatena.ne.jp/fuyunokakashi/20051002」にアクセスしているらしい。でも、理由がわからん。「黄色い涙」が急にブームになったわけでもあるまい・・・。
めったに自分の日記を読み返すことはないが、今回、読み返してみた。そしてまた懐かしくなった。それで、「黄色い涙」 Part 2。
このドラマの主題歌は佐藤春夫の詩「海辺の恋」に小椋桂が曲をつけたもので、小椋桂自身が歌っていた。いかにも叙情歌の王道を行くような甘く切ない歌だった。わたしはいまでも覚えているし、歌うことだってできる。ここで歌って聞かせられないのが残念なくらいだ。

海べの恋         佐藤春夫


こぼれ松葉をかきあつめ
をとめのごとき君なりき、
こぼれ松葉に火をはなち
わらべのごときわれなりき。


わらべとをとめよりそひぬ
ただたまゆらの火をかこみ、
うれしくふたり手をとりぬ
かひなきことをただ夢み。


入日のなかに立つけぶり
ありやなしやとただほのか、
海べの恋のはかなさは
こぼれ松葉の火なりけむ。

数年前、テレビ東京の「同窓会」という番組で、森本レオがこのドラマへの特別な思い入れを語っていた。「おれは、このドラマを作るために生まれてきたようなものだ」と。大げさな言葉だったが、わたしは素直に受け取った。きっと、その通りだと思う。おそらく、その後の芸能生活なんて、森本にとっては付録のようなものだったろう。
いつだったか、新宿の靖国通り森本レオを見かけたことがある。雨の降る午後、人込みの中ですれ違った。森本はビニール傘をさしていた。ちょっと肩をすぼめて、猫背だった。そして、くたびれたジーンズと分厚いセーターを着ていた。いかにも普段着の野暮ったい格好だったのが、うれしかった。それにしても、ビニール傘がよく似合っていたな。
昔、つかこうへいが「おれは、日本でいちばん百円ライターが似合う作家だ」とうそぶいていたが、これに倣って言わせてもらえば、森本レオは日本でいちばんビニール傘が似合う俳優だな。