猫丸

猫丸のマッチ

炭火珈琲・猫丸は都内にある。私鉄沿線の小さな駅の近くにあり、商店街に面している。立地条件は良いはずなのに、平日の客は少ない。その理由はいろいろあるだろう。たとえば土地柄である。そこはビジネス街でも学生街でもない。平日は商店街そのものが閑散としてしまうのだ。
それから値段。珈琲一杯が500円だったと思う。現在、200円でコーヒーが飲めるときに500円はちょっと高いと感じるのだろう。珈琲の味、クオリティは格別なのだが(珈琲の品質や製法について無知なので描写できません。あしからず)。
それから、その存在感のなさである。まるで商売っ気が感じられない。小さな看板が路傍に置いてあるだけで、まったく目立つことがない。自らの存在を消そうとしているみたいだ。おそらく道行く人はそこに喫茶店があることすら気づいてないのではないか?
店は傘屋の二階にある(たしか、一階が傘屋だったと思うのだが、記憶違いがあるかも?)。狭い階段を上がっていくとカウンター席があり、反対側にテーブル席が4つほど。壁にハリウッドの映画スターのポスター(たしか、マリリンモンローだったかな)。それから猫の絵が飾ってある。綺麗な珈琲カップも並んでいる。
カウンターの中には中年の男性・マスターが一人だけ。店内にはジャズが控え目な音量で流れている。乾いた静けさとでもいうのだろうか。なんとも心地よい静けさに包まれる感じがするのだ。
つまり、猫とマリリン・モンローとジャズと無口なマスターの店なのだが、はたして今も存続しているのかどうか。本当はここで場所などをはっきり紹介したいのだが、それはやめておく。なぜなら、このマスターが店の喧伝を歓迎しないのではないかと危惧するからである。そういうことなので、もしどうしても知りたいという方はメールにて、こっそりお教えします。