正午の電話

葉っぱの模様

正午近くなると電話が鳴る。受話器を取ると、相手は名乗りもしないで一方的に喋りはじめる。
「あのね。ノリ弁当ふたつとね、シャケ弁当ひとつ。あと、それから・・・」
弁当屋と間違えているのだ。私の電話番号が市内の弁当屋の番号と似ているらしい。三年前に在宅仕事を始めるために自室に電話を引いたのだが、ほとんど間違い電話の応対に追われている。何のために電話を引いたのかわからない。仕事の依頼よりも弁当の注文のほうが多いのだ。
しかし間違い電話だろうと思っても、鳴れば出ないわけにはいかない。仕方なく受話器をとると、やっぱり「唐揚げ弁当、ふたつ」などとほざく。一人目に対してはまだ愛想がいい。ちゃんと返事もするし、社会人としてのマナーも守っている。しかし、二人目になると様子が変わる。声が低くなって、不機嫌な口調になる。さらに続けて三人目の間違い電話になると、もう頭に血が上っている。こいつ、どうしてくれようかと思う。
弁当屋じゃありません」と言ってから、何番にかけたのかと問い詰めようとすると、相手は事もなげに「あっ、すみません」と言って、一方的に切ってしまう。(きょうの人はもっとひどい。無言で切った)受話器を持ったままの私を置き去りにして。
電話線のコードから手を伸ばして首を絞めてやろうかと思う。それができないなら、いつか化けて出てやる。
まったく、思い出すと腹が立つことばかりだ。でも、気分を変えて写真を紹介する。これは鉢植えの花だが、名前を知らない。葉っぱの模様が面白いので撮ってみた。