"Hard Frost" by R.D.Wingfield

Jack Frost

ようやく読み終えた。予想したとおり、二ヶ月近くかかってしまった。でも、行き詰っていたわけではない。通勤バスの中や喫茶店でちょっとずつ読んでいたのだ。急がず、無理せず、じっくりフロスト警部と付き合うことができて楽しかった。
内容については紹介しないほうがいいだろう。これから読む人にとって予備知識は不要だ。とはいっても、何かひとつくらい言ってみたい。たとえば、犯人は×××です(冗談)。
フロスト警部シリーズを愛読する人は、いわゆる本格推理を期待しているわけではあるまい。おそらくフロスト警部の独特のキャラクターや漫才のような会話を楽しんでいるのだと思う。実際、本書においても、マレット署長とフロスト警部のやりとりはほとんど漫才だ。次々に起こる陰惨な事件の合い間にフロストと署長が顔を合わせると、途端に緊張感が緩んで笑いがはじける。緊張と弛緩がいいバランスを保っている。
内容に踏み込んだことを言うなら、今回の読みどころは犯人探しにあるのではない。刑事コロンボ・シリーズのようにアリバイ崩しにある。そして・・・、いや、もうよそう。これ以上書くと内容をすべて暴露してしまいそうだ。
とにかく、フロスト警部は健在であり、到る所に笑いがあり、ときに人情味もあり、退屈することなく楽しめる。翻訳が待ち遠しい。(正直に言って大筋は理解できたのだが、やはり細部の理解がちょっとぼやけている。ぜひ翻訳文で細部まで賞味したい。そして英語を読みながら、この文章がどのような日本語に翻訳されるのだろうと興味を持った部分が数箇所ある。そのあたりも注目したい。)

Hard Frost (Jack Frost)

Hard Frost (Jack Frost)