武田花写真集

猫・陽のあたる場所

武田花の「猫・陽のあたる場所」はお気に入りの写真集だ。いつも手の届くところに置いて、暇なときにぱらぱらめくって愉しんでいる。この写真集に限らず、武田花の写真は都会の路地や郊外の廃墟や空き地の野良猫が多い。そして、それが私の好みとぴったり重なるのだ。
「猫・陽のあたる場所」は野良猫がメインだから、当然、可愛い子猫ちゃん写真集とは趣が異なる。ゴミ箱の横から顔を出した野良猫はまるで野武士のような顔つきだし、汚れた毛布の上に腹這いになっている猫はどてらを羽織った牢名主みたいだ。そして砂場の前でカメラをにらんでいる奴はスナイパーのような鋭い目つきをしている。こうして見ると、いつどこで屍をさらすかもしれない野良猫の面構えというのはなかなか迫力がある。
写真ばかりではない。写真の間に挟まれている短文もいい。野良猫を撮ったときのエピソードを書いているのだが、幻想と現実が綯い交ぜになった不思議な文章だ。やはり才能は遺伝するのだろう。私は武田泰淳武田百合子の良き読者ではないが、その娘の武田花の文章のファンである。どこの出版社でもいいから、この人をそそのかして小説を書かせてみようという編集者はいないのだろうか。

猫・陽のあたる場所―武田花写真集

猫・陽のあたる場所―武田花写真集

嬉しい街かど

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