黄色い涙

黄色い涙

昭和49年(1974年)にNHKで放映された「黄色い涙」を覚えている人はいるだろうか? 今年6月に亡くなった漫画家・永島慎二の「若者たち」をドラマ化したものだ。当時、私は中学三年生だったが、受験勉強もせずに毎日このドラマを見ていた。
舞台は東京・阿佐ヶ谷。漫画家志望の青年を森本レオ、大阪から上京した詩人を岸部シロー、そして画家の卵を下條アトム、売れない歌手を長澄脩が演じていた。四人の若者たちが四畳半のアパートで共同生活をしながら、それぞれの夢を追っていくという筋立てである。まあ、ありきたりと言えばありきたりである。実際、よくある話だと思う。でも、私は一度見ただけなのにいまだに忘れることができない。(他の似たような青春ドラマはすべて忘れてしまったのに)なぜだろう?と考えたところで、わかるはずもない。だって、三十年も昔のドラマだ。しかも一度見たきりで、その後まったく再見してないのだ。ただ、このドラマの中で四人の若者たちが見せた真摯な(思いつめたような)表情を私はいまだに忘れることができないでいる。
おかげで私は道を誤った。このドラマに影響されて大学を中退し、阿佐ヶ谷に住み、フリーターとして二十代を過ごしてしまった。なにも、すべてをこのドラマのせいにする気はないが、罪深いドラマだと思う。
聞くところによると、森本レオがこの原作漫画にかけた思いは相当に強かったらしい。本人自らがこのドラマを企画し、NHKに持ち込んだということだ。
(原作・漫画「若者たち」は「黄色い涙シリーズ」の中のひとつということらしい。確認してないのではっきりしたことは言えないが、現在、新刊書店に並んでいる「黄色い涙」には「若者たち」が収録されてないようだ。ちなみに、私が所有している青林堂の漫画本は「若者たち」を副題とし、このシリーズ名を本のタイトルにしている。なんだかいろいろあって紛らわしい。購入の際にはご注意を)