眼鏡のネジが折れた

本と珈琲と眼鏡

ベッドの上に置き忘れた眼鏡の上にうっかり腰を下ろして眼鏡のネジを折ってしまった。細かく言うと、眼鏡のフレームのネジ(レンズ止め・ブローチ)が真っ二つに折れてしまった。
この眼鏡を買ったのは十年前のことで、すでにその眼鏡店は潰れて今はない。他の眼鏡店に行って修理してもらうしかないのだが、その前にネットで検索していろいろな情報を仕入れた。そこにはネット特有の邪悪な情報が氾濫している。部品がないから修理できない、修理するにしても数日かかる、結局は買い替えた方が安上がりだ、等々。
まあ、最悪の場合は買い替えるしかないのかと思って、地元の大手眼鏡チェーン店に行ってみた。そしたら女性の店員が出てきて、壊れた眼鏡のネジを見て「ちょっとお待ちください」と言って店の奥へ。5分ほどして店頭に戻ってくると「新しいネジに付け替えてみました。しばらくこれで使ってみてください」と言う。「修理代は?」と聞くと、「要らない」と言う。あまりにも予想外の展開だったので、うわの空でお礼を言って店の外へ出た。
なんだか、狐につままれたようだ。私は店の常連客ではない。三年前にたった一度だけレンズの度を変更してもらったことがある。それも保証期間は過ぎている。その女性店員は見るのも初めてだから、私はまったく未知の客のはずだ。それなのにどうして?
もちろん、これを親切だと受けとり感謝する気持ちをナイーブすぎるとみる向きもあるだろう。それは店の営業方針、長いスパンで顧客を増やすための営業戦略だと言うだろう。しかし、仮にそうだとしても、私がとても助かったことに変わりはない。近頃、珍しく気分のいい出来事だった。あらためて眼鏡市場・神栖店の女性店員さんには感謝する次第である。