「清に毛がはえた」

日本ぶらりぶらり (ちくま文庫)

日本ぶらりぶらり (ちくま文庫)

寝る前に本を読む。といっても堅苦しい本はベッドに持ち込まない。ゆるーい、浮世離れした本ばかり枕頭に並べて眠くなるまで読みふける。
最近は山下清の「日本ぶらりぶらり」(ちくま文庫)がお気に入り。

清に毛がはえ

長崎の岡政というデパートでぼくの絵の展らん会があった。食堂でめしをたべているとぼくの前にいる人が、「わしも山下清に毛のはえたような男です」とよその人に話していた。
ぼくはびっくりしてぼくに毛がはえるというのは、どういうわけですか。どこに毛がはえるとあなたになるのですかときいたら、みんながどっと笑った。
(中略)
ぼくはもう三十四で毛はみんなはえてるのに、この上どこにどんな毛がはえるのだろうか。ぼくは頭がわるいのでわからぬことが多いのです。

ページを繰りながらくすくす笑う。楽しい夢をみることができそうだ。