「こんな時、加藤清正が生きていたら・・・」

私の昭和町
峰岸達「私の昭和町」は昭和三十年代の懐かしい風景を描いたイラスト・エッセイ集。ページを繰りながらスナップショットのように描かれる町の風景やポートレートを眺め、セピア色の昔を懐かしんだ。それにしても峰岸達の絵柄は昭和三十年代の風景にぴったりだな。
井戸水で冷やしたスイカ。水色のスクーター。たばこ屋の赤いホーローの看板。軒下のツバメの巣。赤いポスト。床屋のサイン・ポール。ヒマワリとヘチマと入道雲
また、思い出話に登場してくる町内の人たちも、ちょっと風変わりなんだけど、そういえばこういう人いたよなあ、なんか妙な存在感がある。
おやつに納豆を食べるサッちゃん。
上着の裾をすべてズボンの中へ入れてしまう山本君。
いつもつま先立ちで歩いている相沢君。
野球のユニホームを普段着にしている伊藤君。
ポマードを顔につけてテカテカしている水道屋のヤスオさん。
さいころに柿の木から落ちて頭を打ったせいか、言動が少しおかしいノリちゃん。
二十歳を過ぎても子供と遊ぶのが好きな靴の修理屋のハルちゃん。
広島に原爆が落とされた時、「こんな時、加藤清正が生きていたら・・・」と涙ながらに言った山田のおばあさん。