栗源・山田

斜面の道

このところ用事があって隣の千葉県香取市に出かけている。地元の神栖市には丘陵地がないのだが、利根川を挟んで香取市の方は台地が連なっている。息栖大橋、小見川大橋を渡ってしばらく行くと急勾配の坂道が多くなる。標高40メートルほど高さなのが、ふだん平地で暮らしている私にとっては珍しい。
それにしても自宅から30分ほどのところに、こんな鄙びた土地があろうとは思わなかった。幹線道路から一歩わき道に入ると、細い枝道が集落の奥へ続いている。
一度、畑の一本道を突っ切って雑木林の中へ入っていったことがある。その先に何があるのかわからなかったけれど、おそらく雑木林を突っ切れば幹線道路に出るだろうと高を括っていたのだ。ところが林の中にも畑があり、ビニールハウスが点在していた。樹木の陰には廃屋の小屋がり、道はさらに狭くなっていく。対向車が来たらすれ違うこともできない。それでも直進していくと道は急な下り坂になった。
そろそろ引き返した方がいいのではないかと内心恐恐としつつも坂を下りていくと、突然、民家の屋根が現れた。狭い道の両側には農家らしい家々がぎっしりと連なっている。まるで隠れ里、平家落人の集落のようだ。見ると、立派な門構えの家がある。小さいながらも消防小屋もある。寺も神社もある。しかし依然として道は狭い。そろそろUターンしようと思うのだが、ハンドルを切り返すスペースがない。仕方なく直進していくと一軒の農家の庭先に入ってしまった。恐縮しつつ、急いでUターンして逃げるように来た道を引き返した。休日の午後だったが、ほとんど人影を見なかった。