「花まんま」朱川湊人
- 作者: 朱川湊人
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/04/23
- メディア: 単行本
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お気に入りは、表題作の「花まんま」と「トカビの夜」。二篇とも切なくて、ちょっと泣ける。特に「トカビの夜」に登場する病弱で薄幸な少年・チェンホの面影はいつまでも心に残る。
この短篇に作者の見識が表れている文章があったので、ちょっと引用してみる。
外国籍の人間に対する偏見は今でもあるが、三十年以上昔となれば、なおさらだ。戦前戦中の誤った認識を引きずっている人間はたくさんいたし、自分と異なるものをむやみに低く見て、安っぽい自尊心を満足させる精神の貧しさが、まだ社会のあちこちに横溢している時代だった。それは気のいい袋小路の人々や私の両親の中にさえ、当たり前のように存在したのである。
物語の流れを中断せず、こういう文章を挿入し、哀話ともいえる短編を仕上げた朱川湊人に拍手。ぱちぱちぱち。
(写真はフリー素材。[フォトライブラリー]より)