「男はつらいよ 純情篇」

第6作 男はつらいよ 純情篇 HDリマスター版 [DVD]
全作品を見ているわけじゃないけど、この第六作がいちばん良い出来ではなかろうか。
序盤にいきなり森繁と渥美の共演シーンがあるのがうれしい。それぞれに一人語りの場面が用意されていて、お互いのソロのパートを気持ちよく演じてる。医者の役でちょっとしか出演してないけど松村達雄も軽くていい感じだし、森川信のおいちゃんだって最高。それから寅さんとマドンナとのロマンスがあっさり処理されているのもよかった。 だいたい、このシリーズではマドンナが出てくると退屈する。失恋のメインストーリーよりもサイドストーリーのほうが断然おもしろい。
この作品でも森繁との共演シーンだけでなく、印刷工場を辞めて独立しようとする博を引き留めようとして、タコ社長が寅さんに応援を頼むシーンがある。夕飯時、子供たちの相手をして遊んでいた太宰久雄が急に真顔になり、泣きながら寅さんに訴える。「今、博さんに工場を辞められたら、おれたち家族は首をくくるしかないよ。子供たちが路頭に迷うんだよ。ねえ、寅さん、男と見込んで頼むよ」って言うんだけど、そのときの格好が頭には新聞紙で作った兜を被っているし、腰にはオモチャの刀を差したままだ。
「純情篇」というサブタイトルがついているんだけど、この映画はロマンスよりも「望郷」の要素がかなり濃いと思う。テーマ曲も郷愁をそそるメロディで、古き良き西部劇を思い出した。締めくくりも定石通りなんだけど、今回は一段と情がこもっているようだ。柴又駅のプラットホームで、見送りにきた妹さくらに昔の思い出話をするんだけど、これがちょっといい話で、笑いながらもほろりとさせられる。まあ、うまいもんだ。またひとつ、手元に置いておきたいDVDが増えてしまった。