「さすらい」 ミケランジェロ・アントニオーニ

さすらい [DVD]

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「北イタリアのポー河流域の荒涼たる風景の中、愛する女を失った一人の男の深い絶望や孤独といった悲痛な心理を描く」という紹介文を読んで、これは退屈するかもしれないなと思った。でも、孤独な男があてもなくさすらうという設定には興味がある。それに徹底的に救いのない映画を観てみたいという気持ちも強かった。
とりあえず見てみた。さいわい退屈することはなく、心の空洞をかかえてさすらう男の心情にも違和感を感じなかった。好ましく思ったのは主人公の内面を言葉・セリフでいちいち説明しないことだ。カメラが男の行動を追っていくだけで、心の渇きや孤独がしっかり伝わってきた。主人公のアルドを演じたスティーヴ・コクランの思いつめた表情と北イタリアの風景と静かな音楽が心に沁みてくる。
アルドは各地をさすらう中で数人の女と関係を持つが、それも乾いた砂のような関係でしかない。気まぐれな風が吹けば、すぐに離れ離れになってしまう、そんな希薄な関係しか持つことができない。救いはどこにもないし、救おうともしてない。なんとも手ごわい映画である。
ミケランジェロ・アントニオーニ監督の他の作品も見たくなったけど、続けて見るのはしんどい。気力が充実したときにまた挑戦しよう。