「岳」石塚真一

岳 7 (ビッグコミックス)

岳 7 (ビッグコミックス)

最近、マンガ喫茶に通っている。いま読んでいるのは石塚真一の「岳」。これがなかなかいい。
とくに画が上手いわけではない。短い読み切りマンガだから、うねるようなストーリー性で読ませるドラマでもない。でも、いくつかの短編を読み続けているといつのまにか心が温まり、いい気持ちになっている。
山岳救助の話なので、中身はかなりきわどい場面や多くの死が描かれている。それなのにこのマンガでは愁嘆場が極力抑えられている。手垢のついた生命尊重のお題目を唱えることもない。いっさいの説明や説教を省略して、現場の描写だけで話を作っている。そういう意味ではすごくストイックだ。
そしてなにより、主人公・島崎三歩のキャラクターがいい。大らかでモノにこだわらず、どんな切迫した状況でも淡々としている。そして一息つくときには広大な山々を見渡しながら珈琲を飲む。しみじみと美味そうに飲む。作家のお手柄だな、このキャラクターを生み出したのは。とりあえず、今年いちばんのお薦めです。

岳 4 (ビッグコミックス)
岳 5 (ビッグコミックス)
岳 6 (ビッグコミックス)