「楢山節考」深沢七郎

それにしても文学的装飾のない文章だな。一見、だれにでも書けそうな文章だ。たいていの人は姥捨の特異な世界を書こうとした場合、こんな無造作な文章を選択しないと思う。
本当に書くべき内容を持った作家は文章を飾ることをしないのだろうか。いや、そうではないな。深沢七郎は特別だ。 おそらく文学的装飾や観念的叙述は、深沢七郎にとって生きることと同じくらい煩わしいものであり、不必要なものなのだろう。そんな余計なものを振り落としたところに深沢の文学があるのだろう。