「東京 夜の町角」安住孝史

東京 夜の町角

東京の夜の街角を鉛筆でスケッチした文庫サイズの画集である。安住氏は元タクシーの運転手だそうだ。若い頃に画家を志したけど諦めてタクシーの運転手になったらしい。でも、タクシーの運転手をしながらも仕事で目にする東京の街角を鉛筆でスケッチしていたようだ。
昼間あれだけ人込みの東京の街が、深夜、ひと気がなくなる時間がある。そんなときの街の風景は私も好きな風景だ。高層ビルと狭い路地、街路灯の明かり、そして足音さえも鋭く響く静けさ。もし東京に住んでいたら、安住氏がスケッチした風景を、こんどは私がスナップ写真で追いかけてみたいところだ。
いくつか候補地がある。深夜の倉庫街なんか、すごくいいと思う。ほんと、恐いぐらいひと気がない。がらんとして、寂しくて、街路灯だけがぽつんと灯っている。明るさよりも、電灯が作る影の濃さの方に存在感があるのだ。
十数年のブランクの後、安住氏は再びタクシーの運転手に戻ったと文庫版のあとがき(2001年)で書いている。

東京 夜の町角 (河出文庫)

東京 夜の町角 (河出文庫)