「史記物語」渡辺精一
- 作者: 渡辺精一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/11
- メディア: 単行本
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従来の「史記」関連の本では、英雄豪傑たちの人物像やドラマチックな場面ばかりを紹介しているが、この本はより現実的な政治システムについて言及している。たとえば、秦の始皇帝、漢の武帝といえども決して独裁者ではなかったという指摘がある。かれらを皇帝の地位に押し上げた実力者たちの意向を無視して政治を行うことはできなかったというのだ。歴史の表舞台に出てこない実力者たちの存在についてはあらゆる時代のあらゆる王朝の説明のたびに何度も指摘している。王位の「禅譲」についても、それをきれいごとだと笑っている。本当は血みどろの争いをして奪い取っているのだ。儒家の教えについても、戦国の世にそぐわないきれいごだとして冷淡な視線を送っている。この他にもいろいろ興味深い指摘はたくさんある。(著者の意見が前面に出すぎている箇所もあるが・・・)
「史記」を読むときはいつも文章の力強さや物語の流れに乗ってしまい、何の疑問も抱かずに通り過ぎてしまっていたが、こうして新しい視点を与えられると「なるほど、そういうことだったのか」と納得することが多い。