地雷を踏んだらサヨウナラ

地雷を踏んだらサヨウナラ [DVD]

地雷を踏んだらサヨウナラ [DVD]

(注意:以下、ネタバレです)
見終わったばかりなので熱くなっている。それを差し引いて読んでいただきたい。
今回二度目なのだが、やはりよかった。戦争物にありがちな過剰さがなく、程よく抑制されていて、見終わった後に爽やかな感傷に浸ることができた。
特に浅野忠信に感心した。まるで演技をしていないように見える。素のまま画面に登場して緊張感もなく、ぼーっと道の真ん中に突っ立っているみたいに見えるところがいい。それでいながら、いつのまにか一ノ瀬泰造になりきっている。はまり役とはこういうことを言うものかもしれない。本当は悲惨な話なのに、この映画が明るく爽やかな印象を残すのは浅野の存在感が大きいと思う。
また、別れのシーンが多い。悲惨な死別を織り込みながら手際よく配列されている。仕事仲間との別れ、土地の子供たちとの別れ、家族との別れ、恋人との別れ、親友との別れ・・・。始まりから終わりまで、さまざまな別れが散りばめられ、さまざまな音色を奏でている。
どの別れも切ないのだが(これは観る側が、主人公が最後に死ぬと分かっているためでもあるが)、特に印象的なのは親友との別れである。少年の悲惨な死の後で、結婚したばかりの友に向かって「こんな時だからこそ、幸せな奴がいければ」という言葉を贈る泰造。「アンコールワットのスクープ写真を期待しているよ」と励ます友。その言葉に、にっこり笑う泰造が、「もし、うまく地雷を踏んだら、サヨウナラだ」と言って背を向け、立ち去ってゆく。自転車に乗った泰造の後姿が田園の霧の中を遠ざかり、小さくなってゆく。このシーンは美しい。
個人的にはこのシーンで終わってもいいと思った。でも、やはり死までをきっちり描かなければ大多数の観客は許してくれないのだろう。ラストで泰造をアンコールワットの前に立たせたのは、製作者側の一ノ瀬泰造に対する哀悼の思いではないだろうか。本当はどうだったのか? おそらくアンコールワットを見ることもなく殺されたのではないだろうか。アンコールワットを前にして泰造が呟く最後の言葉が胸に沁みる。 
「カメラだよ、カメラ」