「深夜食堂」

深夜食堂」の第一話から第十話まで観た。雰囲気たっぷりの人情噺といったところか。舞台が新宿というだけで、なんかドラマチックだ。猥雑で暴力的でいかがわしい街。しかも時間は深夜。そこに漂流する人々。道具立ては揃っている。直木賞作家が書く下町人情ものに似ている。ただ、一話一話を吟味するとストーリー展開はチープというか、安普請な作りだ。それでも退屈せず観続けたのは画面の中に溢れる雰囲気に酔うことができたからだ。なんだろうね、この雰囲気。夢と現実が綯い交ぜになって、ぼんやりと薄暗い子守唄を聞いているような心地良さなんだ。

「やっちまったこと、無かったことにはできねえよ。大事なのは、その後どうするかだ」
「けど・・・俺、取り返しのつかねえこと・・・」
「取り返しがつかないってのは、何もしねえで嘆いている奴の言い訳じゃねえのか」

山本周五郎の小説に出てきそうなセリフだ。