デリンジャー

デリンジャー

(注:ネタバレ)
ギャング映画の中でも「デリンジャー」はお気に入り。なにしろテンポがいい。見せ場が多くて、退屈している暇がない。派手な撃ち合い、逃げるギャング一味、追い詰めるFBI捜査官、挿入されるニュース記事。殺伐としたシーンと寂しい荒野の一本道。ギターとハーモニカの牧歌的というか、哀愁たっぷりの音楽。
デリンジャー役のウォーレン・オーツも好演してたけど、FBI捜査官を演じたベン・ジョンソンがいい。こっちのほうがギャングよりも強面で迫力がある。
最後にギャング一味が追い詰められて一人ずつ片付けられていくのだが、その描き方もじつにテンポがよく、軽快で、そしてちょっとセンチメンタルだったりする。やはり娯楽映画には適度にウェットな部分があったほうがいい。たとえば、家族との別れに故郷に戻ったデリンジャーが家の中に入らず、遠くから眺めて去っていくシーン。古くさい表現なんだけど、省略してはいけない場面と思う。
また、スティーヴ・カナリーが演じたギャングの最後もいい。さんざん人殺しをしたくせに妙に爽やかな好青年なのだが、最後におばあさんから聖書を勧められて、お礼を言ってから「おれにはもう手遅れなんだ」と言って柔らかく笑う。荒野を走って逃げてゆくときに流れるギターの音楽が切ない。
そして、ちょっと一味違うのはハリー・ディーン・スタントンが演じるギャング。追い詰められながらも「きょうはついてねえや」と、ぶつぶつ文句を言ってるのが可笑しい。撃たれて転げ回りながら、「痛えよ。ちくしょう。医者呼んでくれよ」と言いながら、結局、蜂の巣にされてしまう。そんな殺され方もまたカッコイイ。