林望氏、神栖市図書館で講演

イギリスはおいしい (文春文庫)

イギリスはおいしい (文春文庫)

たった今、林望氏の講演を聴いてきた。テーマは「私の読書歴」。2時半から4時までの1時間半だった。いろいろ心に留まったことがあるので、それらの記憶が残っているうちに書き留めておく。

  • スローリーディング。多読・速読・濫読を勧めるむきもあるが、それぞれ自分の頭の構造、読書の愉しみ方に沿って読めばいい。自分の場合は読むのが遅い。じっくり文章を味わいながら読むタイプだ。だから、スローリーディング。(これに関してはまったく同感。私も読むのが遅い。というか、せっかく読むのだから、文章の隅々までじっくり時間をかけて味わいたい。たんに情報を得たいだけの読書とは次元が異なる)
  • 何事も、その至芸を味わおうと思えば、元手がかかる。読書もしかり。数々の失敗を糧にして自分に合った本を選択できるようになる。試行錯誤から知性が育つ。(これも、なっとく)
  • 文章の美を創造した成功例。詩で、萩原朔太郎。散文で、永井荷風。読んでいると、ありありとその情景が脳裏に浮かんでくる文章だ。(たしか、山本夏彦がこれとまったく同じセレクションをしていたはず)
  • 人生をどう生きるか、生きる姿勢を含めて、その姿の美を叙述した文章の成功例として森鴎外の「渋江抽斎」。ただし、この「渋江抽斎」については、読むべき時期を間違えると、退屈する。読むべき本には読むべき時期がある。(この読むべき時期、タイミングというのは、ほとんど運命的なものがあると思う。)
  • 日本文学、1千年の歴史の中で最高の一冊は「源氏物語」。おそらく世界レベルでもNo.1。(読んでないのでわからない。そう言われると、ちょっと読んでみたくなる。でも、古典を賞味できるようになるまでに手間隙がかかる。おそらく憧憬しながらも手を出さないだろう)
  • 日本の文学が外国語に翻訳されているけれども、これについては懐疑的。外国文学の日本語に翻訳された作品についても、その翻訳文が嫌いなので読まない。どちらの場合も、前衛的な作品ばかりが紹介される。しかも過大評価されている。日本で一般大衆に本当に愛されている山本周五郎池波正太郎藤沢周平の作品が外国語に翻訳され紹介されているという話を聞いたことがない。(これについてはちょっと耳が痛い。私もどちらかというと前衛的な作品を過大評価して、大衆的なものを低く見る癖がある)

以上。思いつくままに書き並べてみた。もしかしたら、私の勘違い、聞き違いもあるかもしれないが、それもまた誤読の楽しみということで軽くスルーしていただきたい。