私、墓堀人になる

夜中の雪

今週は町内で葬式があり、我が家が墓堀当番になった。当番は四人一組で死者を埋めることになる。
朝、7時に墓地に向かう。雨合羽と長靴と軍手、そして手ぬぐいを首に巻いて寒さを防ぎながら細道を歩いていく。誰も口をきかない。下を向いたまま黙々と歩いていく。柄の長い鍬とスコップを手にして農家の垣根の間の曲がりくねった道を歩いていくと、いつの間にか雨が雪に変わっていた。
集落のはずれまで来ると、前方に墓地が見える。さらに近づくと、墓地の中央の祭壇の前に僧侶が一人立っている。手にはしめ縄と白い札を持っている。我々四人は軽く会釈し、蘇東坡と土饅頭を避けて地面にスコップを突き刺した。
と、ここまで書いてさらに妄想を膨らませてフィクションを書き続けようかと思ったが、やっぱりやめておく。
実は、20年前から墓堀りをやらなくなっている。土葬から火葬に切り替わったのだ。だから、現在は墓石を洗ったり、遺骨を墓石の下に納めたり、ちょっとした雑用の手伝いをするだけだ。もともとこの辺は農家の集落なので昔からの風習がいろいろと残っている。私が子供のころは葬式のときに小銭を投げたものだ。ちなみに、当地では墓堀りとは言わず、蔵堀りと呼んでいる。それにしても生きているといろいろあるものだ。まさか、自分が墓堀人になろうとは。