「あたいの夏休み」中島みゆき

Singles

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図書館から「Singles」を借りてきて聴いている。ほとんど耳に馴染んだ曲ばかりだ。でも、「あたいの夏休み」がちょっと気になって立ち止ってしまった。

この歌がリリースされた当時、ラジオで聴いて苦笑したのを覚えている。さすが中島みゆきだと思う反面、ちょっと大人げないとも思った。「ささやかな夢(見栄)に唾を吐きかけるような真似をしなくてもいいじゃないか。たとえそれがどんなに安っぽい幸せ芝居だったとしても、せっかくの思いを踏みにじらなくても」と。歌詞の中に悪意だけを読み取って、そう思ったわけである。
でも、今回聴きなおしてみて、ちょっと違う感じを受けた。ほとんど罵るように毒づいているのだが、その真意は違うのではないか? マスコミの甘ったるい喧伝に簡単に乗せられて避暑地にやって来るミーハーな女の子たち、その愚かしさを罵るのと同時に、ともに悲しんでいるのではないか。この歌は、そんないじましい生き方しかできない悲しさを歌っているのではないのか。
ただ、「そしてゆっくりと1年は過ぎてゆく」というフレーズはヒヤリとする。ちょっと恐いぐらいだ。何も起こらないままに時間だけが過ぎてゆく。ゆっくりと確実に歳をとって老けてゆく。こういう薄気味悪いフレーズを素知らぬ顔で歌詞の中に忍び込ませておく中島みゆきは・・・、と書き続けたくなるけど長くなるのでやめておく。