東京駅八重洲南口にて

東京駅八重洲北口

通勤にハイウェイバスを使っている。乗り場は東京駅の八重洲南口で、鹿島神宮行きはいつも混んでいる。長い行列の後ろに並んでいたときのことだ。私の後ろに並んだおじいさんが隣のいわき行きのバスの行列の人と話をはじめた。それはそれで和やかな、いい雰囲気だったのだ。ただ、しばらくして隣のいわき行きのバスが先に到着すると、そっちの行列が動き出した。見ていると、そのおじいさんも一緒になって乗り込んでいく。話に夢中になっているのだ。
あーあ、乗っちゃったなと思って眺めていた。そのバスは福島県に行くバスである。こっちは茨城県の南部行きだから行き先が正反対だ。私はこれも自己責任だよな、と冷たく眺めていた。
バスがゆっくりと走り出し、目の前を通過してゆく。私はバスの中のおじいさんの顔を拝んでやろうと目で追った。「成仏しろよ、じいさん」てなもんだ。と、バスが急停車した。入口のドアが開いて、さっきのおじいさんが下りてきた。げらげら笑っている。「あれ、鹿島に行かねえんだってよ」(惜しかったな)
写真は東京駅八重洲北口にあるビルの看板。すごい。東京の中心で、この世は金だ、金だ、金だ、金だと叫んでいる。こういう世界で私たちは楽しく生きているのだ。