新珠三千代／高峰秀子

• 「洲崎パラダイス 赤信号」　　　　　新珠三千代　　川島雄三監督

新珠三千代がこんな汚れ役をやっていたなんて知らなかった。良妻賢母の典型というか、「細うで繁盛記」のおかみ・加代さんの印象しかなかったので意外だった。この映画ではすれっからしの商売女を演じている。その日暮らしの気楽さではなく、どうしようもなく荒んでいく感じがよく出ていた。いい女優だったんだな。

• 「放浪記」　高峰秀子　　成瀬巳喜男監督

放浪記 [DVD]

下がり眉のメークアップで高峰秀子がちょっと不細工な女になっている。お盆を掲げてひょうきんな踊りをおどったりもする。やるじゃないか、デコちゃん。

• 「女が階段を上る時」　高峰秀子　　成瀬巳喜男監督

女が階段を上る時 [DVD]

放浪記とは対照的にこちらは銀座のバーのマダム役。じつに色っぽい。
ここしばらく高峰秀子主演の映画を見ていて気になっていることがある。高峰秀子という女優は美人なんだけど、いつも澄ましてばかりいるわけじゃない。役によっては不貞腐れた表情や、露骨に不機嫌な顔をしたりする。自棄を起こして口汚い捨て台詞を吐くこともある。それがけっこう真に迫っている。開き直りなんて軽いものじゃない。虚無的というか、徹底した人間不信というのか、ぞっとするような暗い目つきをすることもある。負の感性が鋭いのだろうと思う。そして、それがどうやら高峰の生地の性格ではないかと私はひそかに疑っている。とても演技とは思えないのだ。まあ、それが俳優の演技力なんだと言われればそれまでのことだが。